なかよくないほうがよい

ボンボンに腹くちきかな自転車を並べ帰るローマ貴族でなければ 道はローマに通ぜず

おかあさよなら

棒のフランスパンぬばたまのあじさい

どこかしらは晴れというのが彼の言大雨の旅ながいながい旅一回り小さい影が俺の体にまたがっているだろうそこからピチカート

吹き鳴らせ白銀の笛春ぐもる空裂けむまで君死なむまで 牧水馬を洗はば馬のたましひ冴ゆるまで人恋はば人殺むる心 塚本邦雄どこにあった彫刻だったかの話。夏だったような気はふたりして

本当でないことを言うことが本当でないなんていうことはない

シュトルムにしなうもみじのあをければ早月晴天すめらぎもひと月の弧のまっすぐ先に太陽があるということ風うける頬

散りはてて花のかげなき木のもとにたつことやすき夏衣かな慈円(新古今・夏)こんなふうにここにいれば、あとはどこかに行くだけだから。花は落ちきって、セーターはしまったよ。 〈本歌は、躬恒「けふのみと春を思はぬ時だにもたつことやすき花のかげかは」で…

真夜中へ夜は更けてゆきベランダにたち出でて見ゆとおい灯にウクレレを弾く女が揺れる

女らの出で来し夢も半ばまで 好きだった女がたくさん出てきたが助言するだけ夢も現も

窓を閉める ねむる前に 町が見える

丘ふうの山直径で

破けつつ茹だる卵のこつこつと

ひしゃげてく心残りはいつにして針金細工のつたない花に照り映えて 心当たり 心積もり体温

燃え立ちてざりざりと

薄氷のご飯茶碗にシベリウス垂れて盲点のおにぎりを一列読んで昆布になる

スノースタイル

シベリウス 悲しいワルツ庭にざわめき漏れて本家

都市の夜は暗くて深し目上ぐれば赦されざる人しか触れられない拍子木の幽かになるを点滅のシグナルに凭れて聞け 明日に

黄金週間前日 鯉と風車を 子連れ自転車がささげる夕べ

シャワーホースの匂いして芝生の上の年取ってくしゃみ大きくなることもさみしくて枯芝に頬寄すはやばやと日は高くタチアオイ咲く ホースの水の匂い 夏です

カレー後の鍋浸けられて二三日 日が差せばわたしは持ち場を離れられない、

偏ずむ偏む 化粧の手を止めたできたてのもちのやうなる腿の間に手は挟まれて

冬至前後記憶定まらず頁なしジェリービーンのしずけさのごとぽやーんとして更夜

立ったまま菓子食みてをりもそもそと菓子食みている女がひとり

なだめすかす夕まぐれなんらかの完成として町に出づ粘度の低い涙つたって

崖にそう階段に空迫り 有給休暇後の

ほぼひとつだけ大切に そしてほぼそのほぼだけで歩いてゆけり

何の因果か